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zoom RSS 渡邉美保句集『櫛買ひに』

<<   作成日時 : 2019/01/03 11:47  

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 渡邉さんのこの句集『櫛買ひに』は平成30年12月24日、俳句アトラス刊行。氏は柿衛文庫(坪内稔典理事長)の俳句塾で俳句を始め、「火星」を経て現在「香天」(岡田耕治代表)に所属。平成26年に俳壇賞を受賞している。
 この句集の帯文は岡田代表、序文はふけとしこさん、跋文は内田美紗さんが書かれている。

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 自選句は次の通り。

  土に釘つきさす遊び桃の花
  着ぶくれて打ち解けられずゐるふたり
  みどりさすアンモナイトの眠る壁
  薪積む十一月の明るさに
  すかんぽの中のすつぱき空気かな
  花冷えの手に渡さるる特急券
  うろこ雲廃船にある水たまり
  龍淵に潜む卵の特売日
  烏瓜灯しかの世へ櫛買ひに
  絵屏風の裏にふくろふ飼ひ馴らす
  海鳴りや布団の中にある昔
  秋出水鴨横向きに流さるる

 筆者の共鳴句は次の通り。

020 土に釘つきさす遊び桃の花(*)
026 魚くはえ腋のゆるびぬ青鷺は
033 潮の香の留まる路地裏鳳仙花
039 みすゞの碑落葉溜りで日溜りで
050 次の間に男雛女雛の気配かな
051 鳥の巣を見上げてをりぬ測量士
054 五月来る帽子の箱の中に貝
057 五平餅の醤油の匂ひ町薄暑
058 船が舟曳いて過ぎけり蒲は穂に
060 足裏の砂崩れゆく盆の波
061 蒼瓢どこへも行かず何もせず
063 おなかまんまる生まれくる子も柿好きに
065 貼りたての障子に大き鳥の影
068 笹鳴きや新しき橋渡るとき
069 日脚伸ぶ干瓢水にふくらんで
076 虫の夜へ方丈開く法然院
082 春暁を耳さとくゐる島泊り
094 葉桜やキャンパス内に献血車
096 石室の奥に抜け穴瑠璃蜥蜴
099 白さるすべり浮桟橋に父を待つ
103 木通弾けやむにやまれぬかたちなり
108 河口より潮の膨らむ寒夕焼
115 子の靴の野原の匂ひ四月来る
115 麦秋の一本道といふ不安
121 小鳥来るアボガドの種剥がすとき
132 朧より紐出て人形吊るさるる
133 かげろふを耕してゐる男かな
134 馬術部に新入りの馬桜咲く
135 最上階に貰はれてゆく君子蘭
136 まくなぎへ突つ込んでゆく一輪車
139 金色の指輪の沈む金魚鉢
144 猫戻る盗人萩の実をつけて
145 椿の実末つ子と今絶交中
148 烏瓜灯しかの世へ櫛買ひに(*)
151 絵屏風の裏にふくろふ飼ひ馴らす(*)
152 吊革に腕老いてきし十二月
154 枯蔓をたぐればわつと日の匂ひ
157 手毬麩の色の親しき小正月
176 西瓜食ぶ幽霊の役引き当てて

 自選句と重なった3句を鑑賞しよう。

020 土に釘つきさす遊び桃の花(*)
 子供のころの屋外での遊びの一つだった「釘差し」。空き地の土に長めの釘を打ち込むように投げて自分の地保を固める。通常は3人以上の男の子の遊びだったが、美保さんも遊んだのだろうか。春の土が陽炎をたてているような長閑さ。桃の花も効いている。懐かしさがあって、つい取らされた。

148 烏瓜灯しかの世へ櫛買ひに(*)
 死後の世界へ櫛を買いに行く、というシュールな句。「櫛を買う」というのは何かの象徴であろう。女性のあくなき美を求める行為か。あの世まで行ってでも美意識を失わない。しかも提灯の代わりに「烏瓜」を提げて行く。前書きはないのだが、どなたか親しい女性への哀悼句のようにも思える。もちろんそうでなくて良いのだが、不思議な魅力がある。読者の創造に委ねる部分が多くあって、この句集の表題になった。筆者(=栗林)もイチオシの句。

151 絵屏風の裏にふくろふ飼ひ馴らす(*)
 これもやや現実離れした句。「屏風」も「ふくろふ」も冬の季語。しかし、作者の眼前には「絵屏風」しかない。その裏の「梟」は作者のイメージの世界。だからこの句は「絵屏風」が主たる季語である。でも、そんなことはどうでも良い。作者の脳にはいつも梟が棲んでいて、屏風を見ればその裏にかならず梟がいるのである。もっと考えると、鏡を見ればその背後に、格天井を見ればその裏に……梟はひょいと場所を移して鎮座しているのかも知れない。そんなことはどこにも書かれていないが、そう想像して楽しく読ませて戴いた。

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