赤野四羽句集『夜蟻』
赤野氏は、平成28年に現代俳句新人賞を受賞された気鋭の方で、該句集は2018年7月に邑書林から刊行されている。
自選句は次の10句。
春月や数学教師落下する
永き日に挙手の少女ら立ち並ぶ
枇杷二つ南の島にあるむかし
身の内に永劫巡らせて栄螺
茄子の馬とうとう姉の夜が来た
珈琲の染みも秋には罪となり
小鳥来る子どもが丁寧にどもる
ぞんびならゆっくりうごく兎狩
牡蠣剥いて遠い砂漠の民と泣く
百鬼夜行ちょっと紅茶を飲んでから
筆者から著者に宛てた書状をそのまま掲載致します。
冠省
句集『夜蟻』をお送り頂き、有難うございました。
早速、読ませて戴きました。なかなかに読み応えのある句集でした。正直言いまして、私にとっては難解な部類に属する作品が多くありました。私の普段つくる句の方向からは、少しずれているような感じがありまして、その意味で私は赤野さんの句集『夜蟻』の良い理解者でないかも知れません。昭和の前衛とも違い、LOTUSや豈のみなさんとも違った感じです。でも、理解できる、あるいは何かを感じ取れる作品も、もちろん、沢山ありました。理解できる句、あるいは何かを感じさせてくれる句を選びました。お礼をこめて、左記に掲げます。(*)印は赤野さんの自選と重なったものです。
009 疑えどおなじ道なり春の山
020 はいと返事してほら秋蝶がゆく
020 炙られて記憶の爆ぜる秋刀魚かな
031 終ること思い眠れぬ子の炬燵
032 冬の渋滞眺む丸裸の並木
034 ゆっくりと心臓のなる蒲団かな
042 珈琲とおしゃべり夜蟻には内緒
044 少年が西瓜を抱いて待っている
049 初夏やパンの薫りの男来る
050 子を抱いた母は木下闇におり
051 胸元はしろくひろくて茄子の花
054 天高くせんべい齧る妻いとし
054 傍らのいい人彼方にて冷える
059 秋高しきれいな顔を放り投げ
061 ぞんびならゆっくりうごく兎狩(*)
063 ページ繰る音の軽くて秋の蛇
064 茄子の馬とうとう姉の夜がきた(*)
066 短日や視線たがいに縛りあう
066 君だけの時間にもまた雪が降る
073 腹這いの陽炎がくる少しずつ
092 短夜は象牙に挟まれるもよし
096 片隅の煮凝り夜は鵺となる
102 春だから心の闇のなかも春
112 平成虚し菊人形のままの昼
113 蔦紅葉廃炉の錆にすがりつき
118 しぐるるや傘の外には空があり
124 とおくからひとをみているおおかみよ
132 牛と人ともにあぎとを動かせり
139 濃い珈琲夜をゆっくり撓ませる
中でも、太字で印字した作品は大いに気に入っております。
今後ますますのご健吟を期待しております。
草々
栗林 浩
自選句は次の10句。
春月や数学教師落下する
永き日に挙手の少女ら立ち並ぶ
枇杷二つ南の島にあるむかし
身の内に永劫巡らせて栄螺
茄子の馬とうとう姉の夜が来た
珈琲の染みも秋には罪となり
小鳥来る子どもが丁寧にどもる
ぞんびならゆっくりうごく兎狩
牡蠣剥いて遠い砂漠の民と泣く
百鬼夜行ちょっと紅茶を飲んでから
筆者から著者に宛てた書状をそのまま掲載致します。
冠省
句集『夜蟻』をお送り頂き、有難うございました。
早速、読ませて戴きました。なかなかに読み応えのある句集でした。正直言いまして、私にとっては難解な部類に属する作品が多くありました。私の普段つくる句の方向からは、少しずれているような感じがありまして、その意味で私は赤野さんの句集『夜蟻』の良い理解者でないかも知れません。昭和の前衛とも違い、LOTUSや豈のみなさんとも違った感じです。でも、理解できる、あるいは何かを感じ取れる作品も、もちろん、沢山ありました。理解できる句、あるいは何かを感じさせてくれる句を選びました。お礼をこめて、左記に掲げます。(*)印は赤野さんの自選と重なったものです。
009 疑えどおなじ道なり春の山
020 はいと返事してほら秋蝶がゆく
020 炙られて記憶の爆ぜる秋刀魚かな
031 終ること思い眠れぬ子の炬燵
032 冬の渋滞眺む丸裸の並木
034 ゆっくりと心臓のなる蒲団かな
042 珈琲とおしゃべり夜蟻には内緒
044 少年が西瓜を抱いて待っている
049 初夏やパンの薫りの男来る
050 子を抱いた母は木下闇におり
051 胸元はしろくひろくて茄子の花
054 天高くせんべい齧る妻いとし
054 傍らのいい人彼方にて冷える
059 秋高しきれいな顔を放り投げ
061 ぞんびならゆっくりうごく兎狩(*)
063 ページ繰る音の軽くて秋の蛇
064 茄子の馬とうとう姉の夜がきた(*)
066 短日や視線たがいに縛りあう
066 君だけの時間にもまた雪が降る
073 腹這いの陽炎がくる少しずつ
092 短夜は象牙に挟まれるもよし
096 片隅の煮凝り夜は鵺となる
102 春だから心の闇のなかも春
112 平成虚し菊人形のままの昼
113 蔦紅葉廃炉の錆にすがりつき
118 しぐるるや傘の外には空があり
124 とおくからひとをみているおおかみよ
132 牛と人ともにあぎとを動かせり
139 濃い珈琲夜をゆっくり撓ませる
中でも、太字で印字した作品は大いに気に入っております。
今後ますますのご健吟を期待しております。
草々
栗林 浩
この記事へのコメント
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