田吉明「楕円律」

 田吉さんの個人誌「楕円律」(平成三十年四月二十五日刊行)が130号となった。
 田吉さんは京大文学部の名誉教授であられ、国語学の泰斗であられる。その作品は少し変わっている。いわゆる俳句詩とでも言おうか、ノーベル文学賞に輝いたトーマス・トランストロンメル氏が「俳句詩」を書いたが、それに近い。国語学者らしく、用いる言葉は柔らかく雅な大和言葉である。題材は、しかし、日本ばかりとは限らない。西洋の詩から発想した作品もある。
 一般の俳句と違っている点は、二行から三行ほどの定型句をひと塊として一片の作品が完成していて、それに、かならず表題がついている。季語などは、中の一句に含まれる場合もあるが、題にのみ入っていることもある。しかし、連作というのとも違う。


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 今回の「楕円律」は、「春愁伽藍」と題されている。わずか十四頁ほどの小冊子だが、中から「春愁」と「伽藍」の語を含む作品を抽出してみよう。

 飛花(04頁)
 ちぎりといふ 春愁の指 かくからめ
 からめし指を解けば飛花なす別れかな

 悲母観音(05頁)
 渇仰の悲母観音といふ春愁
 母であるかなしみのなか濃き山河

 わがため(07頁)
 花冷えの伽藍のひぐれ誰れもあらず
 泣くためにひとりの影がしのび入る
 わがために死にき と 人を胸に抱き

 花の裔(07頁)
 わが遅日 いつまで灯さざる伽藍
 花深きしづもりを流れてゆく時間
 花をわけて花の裔なるひとが佇つ

 鑑賞は読者にお任せするが、柔らかい情念の流れが、永遠に続いて行きそうな、そんな詩人の「俳句詩」誌であると、いつも感銘している。

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