橋本榮治集(自註現代俳句シリーズ)

 橋本さんは、現在、「枻」と「件」の編集人で、かつ、「馬酔木」同人でご活躍の人。該句集は、このシリーズの12期㊵にあたる(俳人協会、平成31年3月15日発行)。


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 筆者の共鳴句は次の通り。

003 吾子に名を与へて帰る銀河濃
016 手を入れしポストの口の春の闇
042 会へば足る見舞涼しく何も持たず
043 一刷きの海の際まで夕花野
047 人ごみに会ふ白菜を抱く妻と
047 絵屏風の中も雪降る加賀泊
065 母よ母よ冬日に繭のごと眠り
073 山の子の目鼻涼しき踊かな
074 波郷忌の女下駄ゆく吾妻橋
087 墓山も檜山も雲に蕎麦の花
102 キャベツ切る音の軽さも新婚か
120 忙しき人の筆まめ地虫出づ
131 低き灯に買手もすわる農具市
142 先生の足下に寝たる涼しさよ
147 このごろの大学しづか春の蟬

 なかでも、次の句は、その美しさに感銘を貰った。

043 一刷きの海の際まで夕花野
 美しい叙景句である。自解には「その花野からは遥かな海が一線のように見えた。しかし、歩いて確かめたわけではないので、花野が海の際まで続いているかどうかは分からない」との良心的な記述がある。読者の目には、やや下りの先に静かな海がひらけてあり、そこまで花野が続いているのである。海は飽くまでも青い。だから朝の風景だとなお良いのだが。いや、読者の私は、そう受け取って喜んでいる。イチオシの句である。

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