長島衣伊子句集『星まつり』

 長島さんが句集『星まつり』を上木された(平成28年10月29日、文學の森刊行)。氏ははじめ沢木欣一の「風」に所属し、退会後、飴山實に師事。平成8年には自ら「朴の花」を創刊。茨木和生の「運河」にも所属している。平成25年には第5回文學の森特別賞を受賞した。
 該句集は一頁に一句のゆったりとした編集で、271句を収めている。母に捧げるつもりで刊行された、とある。


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 氏の自選10句は次の通り。

  椿切る鋏の音の一度きり
  千仞の谷ゆさゆさと桜かな
  見覚えのなき岩現るる潮干狩
  青空のひかりの器朴の花
  万緑の山は吸はるるごと逝けり
  古本を砦に秋の神保町
  威されしことはきのふよ稲雀
  毛糸玉ころころ母の遠ざかる
  冬の威を一夜に加ふ嶺の白
  初夢の師に褒められてゐたりけり

 筆者(=栗林)の共鳴句は次の通り。

016 引く波も寄せ来る波も花の浪
019 青空のひかりの器朴の花(*)
022 水使ふ音の涼しき山住まひ
036 針山に糸つけし針一葉忌
041 除雪車の明かり大きくすれちがふ
065 楽しさの真つ只中のチューリップ
082 耳も目も自慢の一つ生身魂
116 鳥帰る国境は青き海の上
134 天上に父母そろふ星まつり
144 今生の別れに雪の深すぎる
173 純白を包むかたちに朴ひらく
211 神主の衣濡れてゐる海開き
265 子燕の眠れる駅へ終電車
285 白きにも黒きにも雪降り積もる

(*)は自選句と重なったもの。
琴線に触れた多くの句の中から、五句ばかりを鑑賞させて頂こう。

019 青空のひかりの器朴の花(*)
173 純白を包むかたちに朴ひらく
 長島さんは「朴」がお好きなようだ。「朴」の句がたくさんある。一句目。「青空のひかり」はよくある措辞だが、「ひかりの器」とはよく言えた。長島さんの自選句でもあり、気持ちのよい大景。
二句目は、おなじ「朴」の花の句だが、その花の大きさと柔らかさが見えて来る。朴の花は、同じ白でも泰山木の花とは微妙に違うのであろう。

041 除雪車の明かり大きくすれちがふ
144 今生の別れに雪の深すぎる
 筆者は雪国の出であるが、除雪車と夜間すれ違う時はちょっとした恐れを感じる。煌々とライトをつけて巨大な除雪車が雪をはね飛ばしながら来るからである。自分の車線の先はよく見えない。その状況をリアルに感じた。
二句目。重い句である。身の回りに雪が迫って来る感じ。どなたかが亡くなられたのだろうが、この句の前後にヒントになる句はなかった(師の飴山實の句が一句前にあるのだが、飴山は三月に亡くなっているので、季が違う)。親しい人の死出の旅を思うと、雪深い道は、故人が難渋すると思うせいか、ことに切なくなるのである。

116 鳥帰る国境は青き海の上
 日本で越冬した鳥が北へ帰ってゆく。当然、「国境」は海の上。当然ながら、鳥たちが意識していない国境を、われわれ人間は意識する。それが青い海の上なのだと言う。作者の目線はずっとその先に置かれているのだろう。国際政治とか時事問題の句ではなく、「行く先に青山あり」のおおらかな感慨の句と読みたい。日本ならではの作品である。

 長島さん、ありがとうございました。

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