古志青年部作品集二〇一六

 大谷弘至主宰の「古志」の青年部が出したアンソロジーを読む機会を得た。『古志青年部作品集二〇一六』(年間作品集第五号、平成28年7月1日刊行)どある。
 この作品集には、筆者(=栗林)もときどき接する機会があり、若い方々の句の傾向を知る良い機会と思って読ませて戴いている。
 十五名の作品が各十二句づつ載っている。中から筆者の共鳴した句を三句づつ挙げさせて戴く。鑑賞は各位にお任せする。

イーブン美奈子
06 獺の祭りし魚と出されけり
   憚らず鳥が恋してゐる地球
   夏料理てふせせらぎのやうなもの
石塚 直子
08 学生といふ大役を卒業す
   薄売そこだけ風の起こりけり
   しぐるるや行商の荷の守り札
伊藤 空
10 真つ直ぐに夢をみてゐる雛かな
   月光に保健所の犬鳴きにけり
   恋人と空に鰯の群れを見る
岡崎 陽市
12 梅いちりん伊予一国のごとくあり
   ふぶくなか見あぐる人も桜かな
   すれちがふしろきひかりの秋遍路
金澤 諒和
14 初蝶に鉄壁の天ありにけり
   朧夜やかくも戦後の長き国
   抱きしめて抱きしめられて卒業す
関根 千方
16 山古志の雪の色なる夏の鯉
   この星の水吸ひあげて蓮ひらく
   どつかりと蛇笏の秋の立ちにけり
高角みつこ
18 白シャツの腕まつすぐに飛車香車
   残り香のすいと風鈴鳴らしゆく
   セーターはちぢむし恋はくだけるし
竹下 米花
20 月蝕の静かの海のさやけき夜
   あの人用この人用と大根干す
   衣紋掛部屋に差し込む春の色
丹野麻衣子
22 勇魚すむ海をとなりに春を待つ
   風立ちぬひとたび鱸口あけば
   這ひ這ひにはや鯊釣りを仕込まんと
辻 奈央子
24 道迷ふこともうれしや花の道
   試案には向かぬものなり籐寝椅子
   虫の音に包まれきつて町眠る
内藤 廉
26 春告げる列車の音や新駅舎
   雀の子次はどの子が顔上げる
   麹室したたる汗もそのままに
西村 麒麟
28 烏の巣に烏がとんと収まりぬ
   そこに居るごとく着物や月おぼろ
   夏蝶と遊ぶや妻とその母と
三玉 一郎
30 噴水は怒つたやうにとまりけり
   虫干や一畳で足る母のもの
   雪深き方へと続く雪の道
吉富 緑
32 御降りの雪に白地図ゆくごとし
   外野手の後ろ広びろうまごやし
   干し柿と物干し竿を分かち合ふ
渡辺 竜樹
34 雪吊のゆるみて春となりゐたり
   身に憑きし花を鎮める茶粥かな
   空席の目立つ夜学の灯かな

 楽しませて戴いた。多謝。

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